笑顔が素敵で日々のやる気が伝わってくる職員だった。その職員の笑顔が5月の初めのころから少しづつなくなっていった。あれ?と思って話しかけてみた。
「自信がありません」という。どんなところが?と尋ねてみると「同期は毎日頑張っていて仕事も早いのに自分は同期の何倍も頑張らないとついて行けません」と言う。
何で同期と比べるの?あなたにはあなたのいいところがいっぱいあるじゃないと励まし慰めた。そのうち・・辞めたい・・という言葉が出てくるようになった。
副園長も心配してクラスに入ったり、悩みを聞いては励ましていた。が、中々、笑顔が戻らない。
その日から私は毎日、その職員に電話をかけた。電話の内容はたわいもないものだった。「ご飯、食べたね?」「お風呂に入ったね?」「テレビは何を見てるの?」「好きな芸能人はいる?」等々の話で幼稚園のことは一切話さなかった。
毎日・・それも決まった時間にかけた。最初は電話に出るのも嫌だという感じだった。それでも電話に出てくれるだけでもいいと思ってかけ続けた。幼稚園では電話の事には一切、触れなかった。
かけ続けて一ヶ月が経とうとしていた頃、電話にでる職員の声が明るくなった。
「園長先生、今日、あの子が、この子が」と自分からクラスの事、子どもの事を話してくれるようになった。この職員は辞めたい気持ちを乗り越えることが出来たんだと確信した。
副園長に「あの先生はもう大丈夫よ」と伝えた。何だかとても嬉しくなった。電話をかけ続けて良かった!と思った。たわいもない話だったが職員が悩んでいること、好きな食べ物、芸能人の事、ショッピングの事などを話す中で幼稚園の中とは違う職員の一面をみることが出来て本当に嬉しかった。
これからも諦めることなく私の方から寄り添っていきたいと思っている。