愛犬のお墓参りに行った。立花山というハイキングコースみたいな山がある。愛犬のお墓はその山のふもとにある。好物だったおやつと花、水を持って会いに行った。
緩やかなカーブ道を曲がった途端に夢のような世界が広がった。黄金色に輝く稲穂が広がり、その稲穂を囲むように真っ赤な彼岸花が幾重にもかさなるようにして咲いていた。途中で赤の彼岸花が途絶え、真っ白な彼岸花が、そして、黄色の彼岸花へと色を変え、また赤の彼岸花へと戻っていく。
永遠と続く黄金色の稲穂、彼岸花に見とれていると何か別世界にでも迷い込んだような気がした。このまま通り過ぎるには勿体ないと思って車を止めた。にょろにょろと動くものが足元に見えた。えっ⁈と思って見直した。日光浴でもしているかのようにゆっくりと私の足元を通り過ぎた。蛇だ!ビックリしたが本物の蛇を見たのは何十年ぶりだろうか。私が小さなころは蛇は当り前のようににょろにょろしてた。それが森林が伐採され、田畑には家が建ち並ぶようになった。開発が進むにつれて見れなくなった物はたくさんいる。自然を壊す人間が一番怖いな・・と思った。
サッーと風が吹いた。田んぼの中で「僕の出番だ」と言わんばかりにかかしが揺れた。スズメが一斉に飛び出した。かかしがやったー!と言って笑ったような気がした。さっきの蛇を気にしながらも彼岸花に近づいた。アゲハ蝶が我が物顔に蜜を吸っていた。そっと手を伸ばして彼岸花を摘みたくなったが自然と手が止まった。
この場所はよく愛犬を乗せてドライブをした所でもある。そして、道端の草花に寝っ転がりながら流れる雲を見て「あの雲がショウちゃんで、あの雲がお母さんだね」とおしゃべりをしながらひと時を過ごした思い出の所でもある。一人で愛犬との思い出に浸りながら、その場を後にして愛犬に会いに行った。「お母さん、待ってたよ」と言われたような気もしたが「綺麗なお花をみれてよかったね。」と笑ってくれたような気もした。懐かしい自然と墓参りの楽しい一日だった。