その日は朝から強い雨が降っていた。雨天でも遊べるピロティー(屋根つきの園庭)は、あふれんばかりの子どもたちでいっぱいだった。雨の中でも外で遊ぶのが大好きな子どもたち。やはり!外遊びが大好きな子どもたち。元気いっぱいの声にも笑顔が手に取るようにわかる。時としては勢い余って雨の中を駆けだしてしまう子もいる。それでも雨の中の泥んこを手にいっぱい抱えてきては【団子作り】に興じてお店屋さんごっこが始まる。子どもたちの創造力にはビックリさせられる。雨の一日を過ごした子どもたち。「あ~した、天気にな~れ」と、みんなで空に向かって叫んでさよならをした。
子どもたちが帰った後・・話し合いの時間をもった。来年度の願書配布・入園説明会の話し合いだった。話し合いを終えてベランダに出た時・・!雨があがり、夕日に照らし出された【虹】が目の前に、広く、大きく・・そして、美しく光り輝いていた。「わぁ~!虹、きれいねぇ~」職員みんなが虹にみとれた。
虹は二重にかさなって出ていた。途中で切れることもなく、くっきりとはっきりとみえた。あまりにも美しい自然のアートのプレゼントに胸が熱くなり、涙があふれた。職員が「カメラ、カメラ」と叫んでしきりにシャッターを切っていた。感動したのは私だけではなく職員も感動したのだ。お金では買うことが出来ない心からの感動に職員も「なんだか涙がでる」とつぶやいていた。
心から感動出来るって素晴らしいと思った。それも職員全員で雨上がりの空にくっきりと輝く虹にうっとりとみとれている。職員と心がひとつにつながったような気がした。いいえ【人】として心がつながったのだ!と思った。願書配布前にこのように心がつながるなんて。きっと!来年度の園児募集もうまくいく!と思えた瞬間でもあった。
大学を卒業してから「幼児教育」一筋で歩いて来た私。幼児期にいっぱい遊んだ私。海も山も川も、はたけも田んぼも・・と、いった具合に常に自然に囲まれた中で育った私。ホタルの時期には母が麦わらで作ってくれたホタルかごをもってホタル狩りに行ったものだ。川にはウナギもナマズもドジョウもザリガニもたくさんいた。しじみ貝もいた。勿論、メダカにフナ、ゲンゴロウ、アメンボ、タニシもいた。海にはサザエが、ウニがタコが子どもの私たちの手が届く所にいた。今を振り返れば楽しい思い出が次から次へと掘り起こされてくる。楽しかった!ほんとに楽しかった。この楽しさが私の「幼児教育」の原点となっている。