Vol.072

2009.03.03 Up

☆彡。。・・一人の卒園式・・命の大切さ・・。。☆彡

 数年前のことだが・・鮮明に心に残る卒園式だった。卒園式の前日に保護者から電話が入った。今、東京にいるという。訳を聴くとおばあ様が危篤状態にあるという。あばあ様も大切だがわが子の【卒園式】も大切だと言う。
幼稚園で、はじめての卒園式・・・ましてやわが子にとって、初めての集団生活での晴れの【卒園式】どうしても出席させたいと言う。

明朝一番の飛行機で帰福して、そのまま幼稚園に直行するが、少し遅れると言う。保護者の声は震えていた。自分の母親の見送りか、わが子の卒園式か・・迷いに迷った電話だったと思う。
震える保護者の声を聴いて私もちょっと考えた、が、ここは『命の重み』を、その子に受け止めて欲しいと思った。

卒園式も大切だが、もう戻らぬ人となるかもしれないおばあ様。人が亡くなるってことはこんなにも辛いものか、悲しいものか、苦しいものか、寂しいものかを身をもって知ることが出来て、はじめて【命の尊さ】を知ると思った。
卒園式はいつでも出来ます。おばあ様の【】を大切にしてください」これが私の答えだった。

その子が卒園証書をもらいにくるという連絡が入った。私はもう巣立っていったクラスメートたちに連絡をとった。たくさんのクラスメートが集まってくれた。それから『一人の卒園生の卒園式』が始まった。入場してくる所からはじまった。一人の女の子が入場してくると、クラスメート、保護者の皆様、職員から拍手が起こった。女の子は照れくさそうにしながらも胸を張って入場してきた。その子のお母さんは涙でわが子が見えなかったと言われた。
名前を呼ばれてひな壇に上がってきた子の顔は満面の笑顔だった。たった『一人の卒園式』だったが、何物にもかえれない【宝物】になった。私も嬉しかった。あの時「おばあ様の旅立ちを大切にしてください」と言えたことが嬉しかった。
後で「おばあちゃんが死んだ時、パパもママもみ〜んな泣いたよ。私も悲しかったぁ〜。涙がいっぱいでたよ」と話してくれた。
この子はきっとこれからの人生で『命の尊さ』を全身で受け止めていくことが出来ると思った。また、人の辛さや、苦しさ、悲しさ・・・そして、みんなを思いやることも出来る【】になれると思った。
たった一人の卒園式・・・心に残る卒園式だった。